Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かわぐちこ

野菊の墓他六篇

伊藤 左千夫

Lesen Sie 野菊の墓他六篇 (かわぐちこ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.105 Zeichen · 61 Bildschirme

Aozora Bunko

「ねいあなた、まだ起きないですか」

「ウム起きる、どうしたんだ」

見れば床にすわりこんで、浮かぬ顔をしていた妻は、子どもの寝顔に目をとめ、かすかに笑いながら、

「まァかわいい顔して寝てる、こうしているのを見ればちっとも憎くないけど……」

ちっとも憎くないけどの一語は僕の耳には烈しい目ざましになった。妻はふたたび浮かぬ顔に帰ってうつぶせになにものかを見ている僕は夜具をはねのけた。

「ねいあなた、わたしの体はまたへんですよ」

僕は、ウムと答える元気もなかった。妻もそれきり一語もなかった。ふたりとも起って夜具はずんずん片づけられる。あらたなるできごとをさとって、烈しく胸に響いた。話しするのもいやな震動は、互いに話さなくとも互いにわかっている。心理状態も互いに顔色でもうわかってる。妻は八人目を懐胎したのだ。

「ほんとに困ったものねい」

と、いうような言葉は、五人目ぐらいの時から番ごと繰り返されぬいた言葉なのだ。それでもこの寝ているやつのときまでは、

「もうかい……」

「はァ……」

くらいな言葉と同時に、さびしいようなぬるいような笑いを夫婦が交換したものだ。

「えいわ、人間が子どももできないようになれば、おしまいじゃないか」