Japanische Klassiker mit Furigana
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てつのしょじょ
鉄の処女
大倉 燁子
Lesen Sie 鉄の処女 (てつのしょじょ) von 大倉 燁子 (おおくらてるこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.706 Zeichen · 42 Bildschirme
余り嬉しくってじっと黙って眺めているだけでは我慢が出来ませんでした。
夕方の人気が少なくなったのを見計らって、そっと後に従いて歩きました。
別館には殊に人が少のうございました。智恵子が選手の立像の前に立って、その男性的な筋肉に見入っている時、たまらなくなった私はふいに智恵子の前に姿をあらわして云いました。
『智恵子さん、私ですよ。お見忘れになりましたか? ジョホールで死んだことになっている私ですよ』
智恵子は少しの間棒立ちになったまま、身動きもしませんでした。
日にやけたこの顔も、この声も、彼女の記憶を喚び起すには充分であったほど、その瞬間の私は昔の私にかえっていたのでした。
智恵子の顔は見る見る蒼ざめ、しっかり握り合せている両手が、ぶるぶる震えているのがはっきりと分りました。
『お憶い出しになりましたか? 私はこうして生きていたんです。あなたの目の前にいる私はお化けでも何でもありませんよ』
彼女は額に手を当てていました。前髪の毛が微かにゆれていました。
『何だか私にはさっぱり分りません。どうぞ宅の方へ入らして下さいませ、こんな処ではお話も出来ませんから』