Japanische Klassiker mit Furigana
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てつのしょじょ
鉄の処女
大倉 燁子
Lesen Sie 鉄の処女 (てつのしょじょ) von 大倉 燁子 (おおくらてるこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.706 Zeichen · 42 Bildschirme
「何か、手がかりでもありました?」
心配そうに訊くのだった。恰度二人がその部屋に入った時、伯爵は等身大の亡き夫人の肖像画の前に座って、香を焚き冥福を祷っていた。香の煙は美しい彼女の胸から顔へ、うっすりと立ちのぼっていた。
私はその空々しい、殊勝気な行いを侮蔑の目で眺めた。
S夫人はいつもの優しい態度で、静かに伯爵に云った。
「伯爵、もう好い加減な処で幕に致たそうではございませんか」
「――」
「あなたのお兄様はこの通り自殺しておしまいになりました」
夫人は懐中から夕刊を出して、赤い線をひいた処を指した。
伯爵の顔色は見る見るうちに変った、夫人は穏かな調子で、彼の口から物語られた一什始終を話した。
伯爵は沈黙久ゅうして後、額の汗を拭いながら云うのだった。
「妻を殺したのは兄でもなく、また私でもありません。実は自殺なんです。上野で図らずも兄に出会って、すべての物語りを聞かされ、正直な妻は兄にすまない、せめて自分達の財産全部を返して、お詫びしなければならないと云ってきかないのです。私は慾に目がくらんで我意を通そうとする、その板挟みになって苦しみ、悶えぬいた揚句、自殺してしまったんです。