Japanische Klassiker mit Furigana
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どうせんかいじへん
銅銭会事変 短編
国枝 史郎
Lesen Sie 銅銭会事変 短編 (どうせんかいじへん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.745 Zeichen · 216 Bildschirme
その時にわかに隣りの室へ、人がはいって来たらしく、ひそひそ話し合う気勢がする。
「こいつはどうも面白くない。隣りの室で騒がれたひにはいよいよもって句は出来ぬな」
彼は渋面を作りながら、何気なく隣室の人声へ所在ない耳を傾けた。
誰か苦しんででもいると見えて、呻吟の声が聞こえて来る。
と、おろおろした女の声で、
「お兄様!」と呼ぶ声がする。それに続いて男の声で、
「若旦那様! しっかりなさりませ!」
と、力を付けるような声もする。
「むう。むう」
と苦しそうな呻吟の声は尚続いた、どうやら物でも嘔吐らしい。
暁の光は次第に蒼く次第に明るく射し込んで来る。
と、また女のおろおろ声。
「お兄様! お兄様!」
「若旦那様! 杜鵑之介様! 心をしっかりお持ちなさりませ!」男の声がそれに続く。
「何?」
と其角は眼を見張った。
「杜鵑之介といったようじゃな? 杜鵑之介! 杜鵑! そうして今は暁だ! 隣室では嘔吐を吐いている。よし! 出来た!」
と、思わず叫び、側の短冊を取り上げた。
スラスラと書いたその一句は……
あかつきの
嘔吐は隣りか
ほととぎす
狭斜の巷の情と景とを併わせ備えた名句として、其角の無数の秀句の中で嶄然頭角を現わしているこの「ほととぎす」