Japanische Klassiker mit Furigana
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どうせんかいじへん
銅銭会事変 短編
国枝 史郎
Lesen Sie 銅銭会事変 短編 (どうせんかいじへん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.745 Zeichen · 216 Bildschirme
見舞いには早朝参るとしよう」
三百石の知行取り、本所割下水に邸を持った、旗本の藪紋太郎は酷く生活が不如意であった。
普通旗本で三百石といえば恥ずかしくない歴々であるが、紋太郎の父の紋十郎が、その時代の風流男で放蕩遊芸に凝ったあげく家名を落としたばかりでなく、山のような借金を拵えてしまい、ハッと気が付いて真面目になったところでコロリ流行病で命を取られたので、家督と一緒に借金証文まで紋太郎の所へ転げ込んだ始末。余り嬉しくない証文ではあるが、総領の一人子であって見れば放抛っておくことも出来なかった。
親に似ぬ子は鬼っ子だとある心理学者がいったそうであるが藪紋太郎は実のところ少しも親に似ていなかった。とはいえ決して鬼っ子ではなく鳶の産んだ鷹の方で遊芸は好まず放蕩は嫌い、好きなものは武道と学問。わけても陽明学を好み、傍ら大槻玄沢の弟子杉田忠恕の邸へ通って蘭学を修めようというのだから鷹にしても上の部だ。
二十八歳の男盛り。縹緻もまんざら捨てたものではない。丈は高く肉付きもよく馬上槍でも取らせたら八万騎の中でも目立つに違いない。
貧しい生活をしているにも似ず性質はきわめて快活で鬱勃たる覇気も持っていたが、そこは学問をしただけに露骨にそんなものを表面へは出さない。