Japanische Klassiker mit Furigana
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にしきぎ
錦木
宮本 百合子
Lesen Sie 錦木 (にしきぎ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.481 Zeichen · 103 Bildschirme
「心から」
と云った其の声と姿の忘られないのをどんなに若君は悲しがったろう。七日、十日と立つと気の狂う許りにたかぶった神経も段々しずまると一所に前よりもはげしい悲しみが光君をおそって来た。明けても暮れても光君の耳には、「心から心から」とささやかれて居た。或時女達に向ってきいた。
「つらいこの上なく辛い思いをして生きて居るのと死んで仕舞うのとどっちが好いだろう」
女達はお互に顔を見合せながら、
「私は最後に少しでも望みがあれば生きて居りますが、それでなくては死んでしまいます」
と答えた女が多かった。
「誰でもそうだネー、私が今急に死んだらお前達はどうするだろう、お墓の中からのぞいて居たら面白いだろう」
とじょうだんの様に云った光君の言葉をきいた女達は心の中で、こんなにやつれていらっしゃるのだから何とも云われないとたよりなく思いながら、
「そうしたら女達はみんな黒い着物を着て髪を下してしまいますでしょう」
と年かさの女は答えた。
「お前方のなった尼さんは黒い着物の下に赤の小袿をかくして髪を巻き込んでおく位のものだろう。私が死んでしまった時にほんとうの真心から黒い着物を着て呉れる人はこの広い世界に一人も居ないのだ」