Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にしきぎ

錦木

宮本 百合子

Lesen Sie 錦木 (にしきぎ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.481 Zeichen · 103 Bildschirme

Aozora Bunko

光君の目には涙が出て唇はかすかにふるえて居る。

「私はあの方の乳母に対してあの御方の部屋に御つれ申すことは出来ませんが、道導べに柱に赤い糸を結びつけて置きますからそれをたよって御出になれる様にいたして置きましょう」

乳母はようやっと答えた。

「それでは夕方から行こう」

弟君は嬉しそうに目を輝して居る。フックリと形よく肥えていつもさくら色した頬や、若々しく輝く両の瞳が生れつき形の好いかお立ちをたすけてその美くしさは若々しい力のこもったものであったのが、この頃は頬は青くこけて瞳は怪しい曇りを帯びてにごって香う様な鬢の毛許りがますますその色をまして居る、物凄い、さむい様な美くしさである。

光君は、朝夕鏡を見る毎に日ましにつやをます鬢の毛、日ましにこけて行く両の頬を見て淋しい微笑をうかべて居た、その衰えてますます美くしさのました体をかかえて光君はどんなに日影の斜くのを待ちあぐんで居ただろう。ボンヤリと脇息によってあてどもないところを見つめながら小さい吐息をついて自分の不幸な身の上を思って居られた、その様子を見た女達はこんなにお美くしい方をどんな方でもいやにお思いになるはずはないのに彼の方はほんとうに妙な御方と云い合って居た。