Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にしきぎ

錦木

宮本 百合子

Lesen Sie 錦木 (にしきぎ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.481 Zeichen · 103 Bildschirme

Aozora Bunko

夕方になった、待ちあぐんだ光君は幾日ぶりかにその身を部屋のそとに見せた。光君は長い廊を角々の柱に結びつけた赤の糸をたよりにたどって行かれた。道しるべの紅の細糸は親切に光君を迷わすことなく紫の君の部屋の前まで導いて来た。その人の部屋の前に立った時、光君は今更の様に胸をとどろかせてぬり骨の美くしい明障子の立った様子を見た、何の音もなくしずかな部屋の中には時々柔い衣ずれの音がきこえたりかるいさざめきがもれたりして居た。白い手はかすかにふるえながら障子に掛った、細目にソーと引いて中をのぞくと美くしい几帳が沢山立ててあってそのわきから美くしい色の衣の端がチラチラとのぞいて居る。光君の心は浦島子が玉手箱を開ける時の様に震えた、彼の衣のどれが彼の人だろう、とすぐに入ってその人のかおを見たい様にも思ったけれ共中はまだ燈火もつかず、人のかおもハッキリ見える明るさである。小胆の光君は思い切って中に身を入れる事は出来なかった。せめて燈火の灯ってからとソーと障子をたてて誰か自分を見ようとして居なかったかとかるい恐を持ちながらその前の階から葉桜のしげる庭へ下りた。夕暮のしめった色は木の葉の間々庭草の間々からわいて種々の思いを持った人の身のまわりを包む、光君は頭を深くたれていかにも考えあまった様にだんだん冷たく暗くなりまさる庭を歩き