Japanische Klassiker mit Furigana
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かぎからぬけだしたおんな
鍵から抜け出した女
海野 十三
Lesen Sie 鍵から抜け出した女 (かぎからぬけだしたおんな) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.188 Zeichen · 43 Bildschirme
「え、隠れどころ?」
「この向うの道をドンドン南へとってゆくと、山の上に昇っちまうのよ。そこに大きなお寺があるの。そこは蓮照寺という尼寺なのよ。そこは女人の外は禁制なんだけれど、裏門から忍びこんでごらんなさい。そして鐘つき堂のある丘をのぼると、そこに小さな庵室があってよ。そこに秀蓮尼という尼さんが棲んでいるから、その人にわけを言って匿まってもらうといいわ。分って?」
「ああ、分りました。ありがとう、ありがとう、僕はどんなにして貴方にお礼をしたらいいでしょう」
「お礼ですって? ホホホホ。生命をとられかけていて、お礼はないわよ。……それよりこの手拭で鉢巻をなさいよ。貴方の目印のその額の傷を隠すんだわ。そして一刻も早く、教えてあげたところへ行ったらいいじゃないの」
「じゃあ行きます。……最後に、ぜひ聞かせて下さい。生命の恩人である貴方のお名前を……」
「あたしの名前? 名前なんか聞いてどうするの……でも教えてあげましょうか。島田髷の女――よ」
女は自ら、つと軒下を出ていった。
僕は呆然とその不思議な若い女のあとを見送っていたが、やがて吾れにかえると島田髷の女から貰った手拭で鉢巻をし、生命をかけた危ない目印を隠した。