Japanische Klassiker mit Furigana
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ながさきのかね
長崎の鐘
永井 隆
Lesen Sie 長崎の鐘 (ながさきのかね) von 永井 隆 (ながいたかし) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 65.109 Zeichen · 131 Bildschirme
このずんぐりの樽ちゃんと豆ちゃんが予診室へ入ってみると、患者と学生と入りまじって七人うなっている。二人は、入口の大きな男を引き起こし、縦抱きの要領で静かに抱き上げ、そのまま階段を下ってコークス置き場へ運んだ。すぐ引き返して、同じように次の学生を運ぶ。三人、四人、一室がすむと次の検査室。ここには顔見知りの看護婦さんがいた。それを抱いて階段を下りながら、樽ちゃんは生まれて初めて知る歓喜の念を覚えた。それはなんともいえぬ崇高な幸福、歓喜だった。この浜崎さんは、私に抱かれて火の中から出ようとしていることも知らず、かすかに呻いている。豆ちゃんも私のことを口外しないなら、浜崎さんは永久に私たちから救われたことを知らないだろう。もし万一助かることがあったら、廊下などで会った時、何も知らずに通り一遍の会釈をして行き過ぎるだろう。そう思うと、知らず知らずに頬の肉がゆるんでくるのを感じた。幼い日に赤いぐみの実をクリームの空瓶に塩漬けにし、私一人知っている納屋の隅の味噌桶の裏に隠して、姉にも知らせず、弟の目をもはばかり、朝夕こっそりその味を試しに入って、艶々しいぐみの実を、まるでルビーかなにかの宝石のように見つめた、あの純粋なほのかな歓喜を連想した。