Japanische Klassiker mit Furigana
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もん
門
Lesen Sie 門 (もん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 139.830 Zeichen · 278 Bildschirme
随分御苦労さまね。この寒いのに」と云う御米の後に追いて、清は大きな声を出して笑った。やがて、
「御若いから」と評しながら、勝手口へ行って、御米の下駄を揃えた。
「どこの夜景を見る気なんだ」
「銀座から日本橋通のだって」
御米はその時もう框から下りかけていた。すぐ腰障子を開ける音がした。宗助はその音を聞き送って、たった一人火鉢の前に坐って、灰になる炭の色を眺めていた。彼の頭には明日の日の丸が映った。外を乗り回す人の絹帽子の光が見えた。洋剣の音だの、馬の嘶だの、遣羽子の声が聞えた。彼は今から数時間の後また年中行事のうちで、もっとも人の心を新にすべく仕組まれた景物に出逢わなければならなかった。
陽気そうに見えるもの、賑かそうに見えるものが、幾組となく彼の心の前を通り過ぎたが、その中で彼の臂を把って、いっしょに引張って行こうとするものは一つもなかった。彼はただ饗宴に招かれない局外者として、酔う事を禁じられたごとくに、また酔う事を免かれた人であった。彼は自分と御米の生命を、毎年平凡な波瀾のうちに送る以上に、面前大した希望も持っていなかった。こうして忙がしい大晦日に、一人家を守る静かさが、ちょうど彼の平生の現実を代表していた。