Japanische Klassiker mit Furigana
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いんじゅう
陰獣
江戸川 乱歩
Lesen Sie 陰獣 (いんじゅう) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 66.968 Zeichen · 131 Bildschirme
大江春泥、アア、怪物大江春泥の俤が、しきりに私の心にねばりついて来るのだ。
一度そんな考えが芽生えると、凡ての事柄が、不思議に疑わしくなって来る。一介の空想小説家に過ぎない私に、意見書に記した様な推理があんなに易々と組立てられたということも、考えて見ればおかしいのだ。現に私はあの意見書のどこやらに、飛んでもない錯誤が隠れている様な気がしたものだから、一つは静子との情事に夢中だったせいもあるけれど、草稿のまま清書もしないで放ってある。事実私は何となく気が進まなんだ。そして、今ではそれが却ってよかったと思う様にさえなって来たのだ。
考えて見ると、この事件には証拠が揃い過ぎていた。私の行く先々に、待構えていた様に、御あつらえ向きの証拠品がゴロゴロしていた。当の大江春泥も彼の作品で云っていた通り、探偵は、多過ぎる証拠に出会った時こそ、警戒しなければならないのだ。第一あの真に迫った脅迫状の筆蹟が、私の妄想した様に六郎氏の偽筆だったというのは、甚だ考え難いことではないか。嘗つて本田も云ったことだが、仮令春泥の文字は似せることが出来ても、あの特徴のある文章を、しかも方面違いの実業家であった六郎氏に、どうして真似ることが出来たのであろう。