Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あめのひ

雨の日

辰野 隆

Lesen Sie 雨の日 (あめのひ) von 辰野 隆 (たつのゆたか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.385 Zeichen · 5 Bildschirme

Aozora Bunko

三年前に亡くなった母は、いたく雨を好んだ。僕の雨を愛づる癖は恐らく母から承けたのであろう。いまそかりし昔、僕はしばしば母と閑話を交えながら、庭に降る雨を眺め暮したことを今もなお思い出す。

雨の日なら、春夏秋冬、いつも僕は気分が快いのだ。降りだすと、僕は、雨を眺めながら、聴きながら、愛読の蕪村句集を取り出して徐ろに読み耽る癖がある。この稀有な視覚型の詩人の視野においては、「簑と傘とがもの語り行く」道のほとりに、或は「人住みて煙壁を漏る」陋屋の内に、「春雨や暮れなんとしてけふもあり」という情景も床しく、「五月雨や仏の花を捨てに出る」その花の褪せた色も香も、「秋雨や水底の草蹈みわたる」散策子の蹠の感覚も、「楠の根を静かにぬらす時雨」の沈静な風趣も、悉く好もしい。

若し晴天に風が伴わなかったら、僕は必しも蒼空を詛いはしない。しかし、少くも微風よりも強い風が吹き初めて、砂塵を揚げ出したら、その瞬間から、僕は蒼空の徒らに蒼きを憤って、雨を想い、雨を呼ぶようになる。雨さえ降ってくれれば常に心和み神休むのである。どうも、僕の前世は田圃の蛙か田螺であったらしい。