Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんさいにっし

震災日誌

喜田 貞吉

Lesen Sie 震災日誌 (しんさいにっし) von 喜田 貞吉 (きたさだきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.617 Zeichen · 40 Bildschirme

Aozora Bunko

道の辻々を警めて、一々通行人を誰何する。どこでは爆弾携帯の壮漢が捕われたの、どこでは揮発油入の瓶を持っていた婦人が縛られたの、現に放火の現行犯が押えられるのを見て来たのと、誠らしい噂に人々が目を丸うする。牛乳配達者に気をつけよ、牛乳鑵の中へ揮発油を入れているかも知れぬ、在郷軍人の服を着ているからとて、避難者の風態をしているからとて、それで決して油断をするな、救護班の腕章をつけて誤魔化している不逞漢があるそうな、婦人小児だとて安心してはならぬ、と、およそ自分らの知人以外のものは、ひとまずもって放火犯人の連累と見て警戒せよというのだ。ことに自分らの東青柳町は、その背後に通称大塚の火薬庫なる兵器廠があるので、それを爆破すべく不逞の徒が念がけているという風説に、いっそう神経を鋭くさせられる。裏の空地を挾んだ火薬庫の崖の藪の中へ、怪しいものが入り込んだと誰かが言い出した。人々は手に手に獲物を提げて群集する。騎馬の憲兵が数騎右往左往に駆けまわる。その物騒なことったらない。正服、私服の巡査が二人、火事泥だか何の犯人だか知らぬが捕縄をかけた若者を引いて、裏通りを近所の大塚警察に連れて行く。