Japanische Klassiker mit Furigana
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ひじょうのあい
非情の愛
豊島 与志雄
Lesen Sie 非情の愛 (ひじょうのあい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.831 Zeichen · 24 Bildschirme
「あなたは、あれとは別なことを考えていたようです。何を考えていましたか。」
「何にも考えてはおりませんでした。ただ、ちょっと気がかりなことがありました。」
次の言葉を皆は待った。彼女は真面目に言った。
「あの神子のひと、少しびっこのようでした。どちらの足がわるいかは分りませんが、少しびっこのようで、それが気になりました。」
全く期待にそわない言葉だった。誰も黙っていた。がその沈黙のなかで、波多野はまじまじと彼女の顔を見つめた。その視線のもとで、彼女は突然頬に血を漲らし、その血が引くと、薄い皮膚が透き通って見えるほどに緊張した。波多野はへんに眼をしばたたき、それからウイスキーと水をコップに注いで、彼女の前に差出した。
「お飲みなさい。」
「あら、わたくし……。」
「構わないから、飲んでごらんなさい。それから、煙草もどうです。」
彼女はちらと波多野の顔を見たが、また頬に血を漲らして眼を伏せた。眼の前に、波多野のシガレットケースがあった。彼女はそれにちょっと美しい指先で触れたが、そのままそれは押し返して、コップを取上げ、唇をつけた。貝殻のような爪が光った。
彼女がコップを置くのを待って、波多野は手を伸べて握手した。