Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.327 Zeichen · 43 Bildschirme
叔父庄兵衛の組下で神田の御用聞、ひょろりの松五郎だけが顎十郎が江戸に帰って来ていることを知っているが、金助町へ知らせないようにと堅く口どめしてある。
そういうわけだから、金ッ気などのあろうわけがない、まるっきり文無し。中間、陸尺のほうでもそんなことは先刻ご承知。
無理にじぶんの部屋へ引っぱってカモにしようの、振るまいにつこうのというのではない。気ままに寝ッころがらしておいて、寄ってたかって世話を焼き、ぽってりと長い顎を撫でて、うへえと悦に入る長閑な顔が見たいのだという。
脇坂の部屋を振りだしに榎坂の山口周防守の大部屋、馬場先門の土井大炊頭、水道橋の水戸さまの部屋というぐあいに順々にまわって、十日ほど前から、この松平佐渡守の中間部屋に流連荒亡している。
顎十郎は、色のいい蜜柑を手の中でころがしながら、
「おい、三平、これが鞴祭の蜜柑か」
「へい」
顎十郎はニヤリと笑って、
「ごまかしても、だめだ。……こりゃあ、鞴祭の撒き蜜柑じゃねえ、屋敷の御厨部屋からくすねてきたんだろう」
三平という中間は、えへ、と頭へ手をやって、
「あいかわらず先生にはかなわない。……ど、どうして、それがわかります。