Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.028 Zeichen · 28 Bildschirme

Aozora Bunko

「や、ごめん」

と、軽く言って、ちょうど質ながれの烏天狗のような恰好でヒョロヒョロと歩いて行ってしまった。

ひきそっていた千太の一の乾分、だんまりの朝太郎、めったに顔色も変えることがないのに、くやしがって、

「ち、畜生ッ。いつもの旦那のようでもねえ、ああまで、コケにされて……」

と、足ずりする。藤波は見かえりもせず、ずッと乗物のそばへよると底板をかえしたり、網代を撫でたりして、テキパキとあらためはじめた。

朝太郎は、ぬけ目のないようすで藤波のあとについて歩きながら、

「馬鹿なことをおたずねするようですが、実のところ、やはり神隠しなんでございましょうか」

藤波は、フフンと鼻で笑って、

「神隠しなら、いっそ始末がいいが、そんな生やさしいこっちゃねえ、攫われたのだ」

「でも、どの木戸も出ちゃアおりません」

「なにを。……十三の乗物は、ちゃんと木戸を通ったはずだ。現に、ここにこうして投げだしてあるじゃねえか」

「そりゃアそうですが、番所には、それぞれ十人からのお勤番が控えております。いったい、どうしてその眼をくらましたのでしょう」

「たったひとつ方法がある。……木戸うちにいないとすれば、木戸から出たと思うほかはない。