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Japanische Klassiker mit Furigana

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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.832 Zeichen · 24 Bildschirme

Aozora Bunko

……顎十郎は下から花世の顔を見上げながら、こんな不埓なことを考える。

「ねえ、花世さん、路考の門弟の路之助が、また新作のはやりうたを舞台でうたっているが、三絃に妙手があるのか、いつみても妙だぜ」

花世は、つんとして、

「また、のんきらしい。……芝居どころじゃありませんてばさ、私にも隠しているから、切り出すわけにもゆきませんが、あんまりな気落ようで、いっそ、こわくッてなりませんよ」

顎十郎はのんびりと顎をなでながら、庭のほうへ眼をやり、

「なアに、案じることはない……こうしていれば、いまに、やってくる」

「なにが、やって来ます」

「いやなに、植木屋でもやって来そうな日和だってことさ」

花世は焦れて、

「冗談ばっかり。……たんとおふざけなさい。私ァ知らないから」

と、拗ねたふうに出て行く。

顎十郎は花世の足音が錠口の向うへ消えるのを聞きすますと、庭へ下りて裏木戸の方へ行き、掛桟を外してまた座敷へ戻って来た。

眷属

それから小半刻。

煙草盆をひきよせて雲井を輪にふいていると、裏木戸があいて、出入の植安の印絆纒を着た、二十五六の男前のいい職人が小腰をかがめながら入って来た。