Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.022 Zeichen · 36 Bildschirme
……ひとつ、川下であの女を引きあげて、うまく泥を吐かしてやる」
古袷の裾をジンジンばしょりにすると、空脛をむき出して、崖っぷちに沿ってスタコラと川下のほうへ駈けだす。
このへんは足利時代の太田の城のあったあとで、そのころの殿守台や古墳がところどころに残っている。古い城址の間を走りぬけて行くと、断崖に岩をそのまま刻んだ百五十段の石段が水際までつづいていて、その下に羅漢の井戸という古井戸がある。
飛ぶように急な石段を駈けおり、井戸のそばの岩のうえに跼んで、薄月の光をたよりに川上の水面を睨んでいると、先程の女がはげしい川波に揉まれながら、浮きつ沈みつ流れてくる。
女の頼み
水際に倒れていたひと抱えほどある欅の朽木を流れの中へ押し落すと、身軽にヒョイとその上に飛び乗り、押し流されてくる女の襟くびを掴んで川岸へ引きよせる。波よけの杭に凭せておき、石子詰の蛇籠に腰をかけてゆっくりと一服やり、
「これで一段落。……あとは水を吐かせるだけ」
暢気なことを言いながら、薄月に顔むけて眼を閉じている女の顔をつくづくと眺める。
二十歳といっても、まだ二十一にはならない。