Japanische Klassiker mit Furigana
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かぜにのってくるコロポックル
風に乗って来るコロポックル
宮本 百合子
Lesen Sie 風に乗って来るコロポックル (かぜにのってくるコロポックル) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.458 Zeichen · 39 Bildschirme
風に乗って来るコロポックル
宮本百合子
一
彼の名は、イレンカトム、という。
公平な裁きてという意味で、昔から部落でも相当に権威ある者の子に付けられる種類の名である。
従って、彼はこの名を貰うと同時に、世襲の少なからぬ財産も遺された。
そして、彼の努力によって僅かでも殖(ふ)やしたそれ等の財産を、次の代の者達に間違いなく伝えることが、彼の責任であった。
混りっけのない純粋なアイヌであるイレンカトムは、祖先以来の習慣に対して、何の不調和も感じる事はない。
彼は自分に負わされた責任に対して、従順以外の何物をも持たなかったのである。
けれども、不仕合わせに、イレンカトムには一人も子供がなかった。
心配しながら家婦(カッケマット)も死んで、たった独りで、相当な年に成った彼は、そろそろ気が揉め出した。祖先から伝わった財産(たからもの)を、自分の代でめちゃめちゃにでもしようものなら、詫びる言葉もない不面目である。
自分がいざ死のうというときに、曾祖父、祖父、父と、護りに護って来た財物を譲るべき手がないという考えがイレンカトムを、一年一年と苦しめ始めた。