Japanische Klassiker mit Furigana
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かぜにのってくるコロポックル
風に乗って来るコロポックル
宮本 百合子
Lesen Sie 風に乗って来るコロポックル (かぜにのってくるコロポックル) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.458 Zeichen · 39 Bildschirme
悲しいとき、嬉しいとき、昔の思出の堪え難いとき、彼はただ謡うことだけを知っていたのである。
こうして春と夏とが過ぎて行った。
四
秋になると、暫くの間顔も見せなかった豊が、フラリとやって来て、東京へ行って商売をしたいから、金を呉れと、云い出した。
「何? どこさ行(え)ぐ? どこさ行くだ?」
と、幾度も、幾度も訊きなおして、東京ということが自分の空耳でないのを知ると、イレンカトムは、ほんとにまごついてしまった。
あんなに遠い所、あんなに可恐(おかね)え処、もう生きては戻るまいというようなことを一時に思いながら、彼は、息を殺したような声で、
「豊坊、お前(めえ)、東京たあ如何(あじょ)な処だか知ってるかあ」
と、息子の顔を覗いた。
「如何(あじょ)な処って、お父(と)。東京だって人間の住(し)んでる処さな」
「戯談(おどけ)るでねえ!」
そう云った限(き)り、イレンカトムは黙り込んでしまった。
胡坐(あぐら)を掻いた細い両脛の間に、体全体を落したように力のない様子をして、枝切れで燻(くすぶ)る炉を折々弄(いじく)っていた彼は、やや暫く経つと、フイと俯(うつむ)いていた首を上げて、