Japanische Klassiker mit Furigana
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うまじごく
馬地獄
織田 作之助
Lesen Sie 馬地獄 (うまじごく) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.597 Zeichen · 4 Bildschirme
橋の上を通る男女や荷馬車を、浮かぬ顔して見ているのだ。
近くに倉庫の多いせいか、実によく荷馬車が通る。たいていは馬の肢が折れるかと思うくらい、重い荷を積んでいるのだが、傾斜があるゆえ、馬にはこの橋が鬼門なのだ。鞭でたたかれながら弾みをつけて渡り切ろうとしても、中程に来ると、轍が空まわりする。馬はずるずる後退しそうになる。石畳の上に爪立てた蹄のうらがきらりと光って、口の泡が白い。痩せた肩に湯気が立つ。ピシ、ピシと敲かれ、悲鳴をあげ、空を噛みながら、やっと渡ることができる。それまでの苦労は実に大変だ。彼は見ていて胸が痛む。轍の音がしばらく耳を離れないのだ。
雨降りや雨上りの時は、蹄がすべる。いきなり、四つ肢をばたばたさせる。おむつをきらう赤ん坊のようだ。仲仕が鞭でしばく。起きあがろうとする馬のもがきはいたましい。毛並に疲労の色が濃い。そんな光景を立ち去らずにあくまで見て胸を痛めているのは、彼には近頃自虐めいた習慣になっていた。惻隠の情もじかに胸に落ちこむのだ。以前はちらと見て、通り過ぎていた。
ある日、そんな風にやっとの努力で渡って行った轍の音をききながら、ほっとして欄干をはなれようとすると、一人の男が寄ってきた。