Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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うまじごく

馬地獄

織田 作之助

Lesen Sie 馬地獄 (うまじごく) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.597 Zeichen · 4 Bildschirme

Aozora Bunko

貧乏たらしく薄汚い。哀れな声で、針中野まで行くにはどう行けばよいのかと、紀州訛できいた。渡辺橋から市電で阿倍野まで行き、そこから大鉄電車で――と説明しかけると、いや、歩いて行くつもりだと言う。そら、君、無茶だよ。だって、ここから針中野まで何里……あるかもわからぬ遠さにあきれていると、実は、私は和歌山の者ですが、知人を頼って西宮まで訪ねて行きましたところ、針中野というところへ移転したとかで、西宮までの電車賃はありましたが、あと一文もなく、朝から何も食べず、空腹をかかえて西宮からやっとここまで歩いてやって来ました、あと何里ぐらいありますか。半分泣き声だった。

思わず、君、失礼だけれどこれを電車賃にしたまえと、よれよれの五十銭銭を男の手に握らせた。けっしてそれはあり余る金ではなかったが、惻隠の情はまだ温く尾をひいていたのだ。男はぺこぺこ頭を下げ、立ち去った。すりきれた草履の足音もない哀れな後姿だった。

それから三日経った夕方、れいのように欄干に凭れて、汚い川水をながめていると、うしろから声をかけられた。もし、もし、ちょっとお伺いしますがのし、針中野ちうたらここから……振り向いて、あっ、君はこの間の――男は足音高く逃げて行った。