Japanische Klassiker mit Furigana
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まぞう
魔像
林 不忘
Lesen Sie 魔像 (まぞう) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 131.494 Zeichen · 260 Bildschirme
それはまことに、穏かでない。人の細君が入浴しているところを覗くんだから、まさに池田亀太郎氏の先祖で亀右衛門。気丈な園絵である。いそぎ腰へ手拭を廻し、両手で乳房をかくして蹲踞みながら、キッ! となって窓を振りあおいだのだが、心の迷いであったか、窓を通して夕陽の色が沈みつつあるばかり――人の顔なんか、ありはしない。
アアよかった。早く出ましょう……起ち上った園絵だ。今度はハッキリ見たのだ。見るも見ないもない。そこの窓から、良人喬之助がじぶんを見下ろしているではないか!
「あッ! あなたッ!」叫んだ園絵だ。「何でそんなところから――ただいま参りますッ!」
瞬間である。ほんの一刹那、湯殿を跳び出しながらチラと見返ると、そこにはすでに喬之助の顔も誰の顔もなかったが、確かにこの双の眼で見たのだから、園絵は、気も顛倒している。濡れたからだを碌々拭きもせず、そのまま着物を引っかけて帯を廻し、近くの縁から庭下駄を突っかけて転ぶがごとく、その、たったいま喬さまのお顔の見えた窓の下へ来てみる――と、人影もない。
おや!……と、見廻した。ここに立って覗いていなすったのだが、どこへいらしったのだろう? ハテ、無いものをあると見たのかしら? 兇変があると、心が飛んで来て姿にあらわれるという。