Japanische Klassiker mit Furigana
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まと
魔都
久生 十蘭
Lesen Sie 魔都 (まと) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 293.999 Zeichen · 578 Bildschirme
外の曳出しは乱雑だから気がつかなかったが、ここは敷布類がキチンと入っているので、だれかが大急ぎで掻き廻したなということがひと目で判る。真名古の方は丁寧に掻き廻す。敷布の間からこんなところにありそうもないものが現われて来た。薔薇根のシガレット・ホルダーである。かなり特徴のあるもので、獅子の頭が彫刻され、その口が煙草を啣えるようになっている。真名古はそれを取上げて仔細に見る。重く垂れ下った瞼の間から一種凄惨な光が洩れ出して来た。それを化粧台の上に載せて椅子に掛けると、低く首を垂れてそのまま動かなくなってしまった。十分、十五分。微動もしない。人気のないこの寂然たる殺人の現場に、寥々と瘠せた男が影のように坐っているさまは鬼気迫るような気がする。真名古は腹でも切ろうというのではないか。深い憂色を浮かべて深く俯向けた頬は、血の色を失って煤黒くなり、骨立った肩が波のように起伏するのは何か非常な大煩悶に逢着したのだということが判る。やや暫くののち顔をあげる。この時はもう平常通りの冷々沈々なる面持になっていた。新聞紙の包みを小脇に抱え、手芸品の包みを指の先にブラ下げて鶴子の住居を出ると、一旦階下へ降り、御用商人専用の裏階段を上って勝手口の扉の外側へくる。