Japanische Klassiker mit Furigana
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まと
魔都
久生 十蘭
Lesen Sie 魔都 (まと) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 293.999 Zeichen · 578 Bildschirme
救いの天使のようにあなたがおあらわれになったのであるという事まで、何をいっても真名古は黙っているものだから、加十は追々図に乗って、むしろ楽し気にさえ陳述したのである。
真名古は時々薄眼をあけて加十の顔を偸視る。口の角に泡をためて無闇と饒舌りまくっている愚直なようすを見ると、この男が嘘をいっているのではないことがすぐわかる。陳述の節々も一々現場調査の結果と符合する。料理場の壁の鋳型彫によっても加十が犯人でないことがすでに判明している。この中背の雑報記者は、たとえ爪立ちしても壁に彫り込まれた上衣の裾の線には届かない。のみならず、この多過ぎる頭髪はどうしたって毬栗頭の印象は与えない。が、真名古はなかなか人が悪い。こんな風に誘導けて見る。
「お前を玄関へ送って来た時、鶴子はだいぶ酔っている風だったかね」
「送ってなぞ来ません、立上りさえしなかったんです」
「成程、では、お前に玄関の鍵を渡したのだね」
「鍵なんぞ貰いません」
真名古はキラリと眼を光らせ、
「夜食の最中に鶴子が立って行って玄関に鍵をかけ、その鍵を持って戻って来たといったな。……鍵を持たずにどうして玄関を出たのだね。