Japanische Klassiker mit Furigana
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まと
魔都
久生 十蘭
Lesen Sie 魔都 (まと) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 293.999 Zeichen · 578 Bildschirme
池の畔の四阿の前に確かに皇帝が立っていたという、例の間違いの続きなのである。
林は膝を掻きむしって激発し、
「実に馬鹿なことをする。たとえ嫌がらせだろうと、もう、もう黙っちゃいない。会釈も糞も要るもんか、すぐ警視庁に電話をかけて小口と野毛山をふン縛らしてしまえ」
と、日ごろでさえ赤い恵比須顔に一段と朱をそそいで、まるで火の玉のようになって猛り立つのを道灌山は静かに制し、
「林さん、それぁ、いけません」
年のころは五十五六、白銀のような白髪をオール・バックに撫でつけ、額には年の数ほどの皺もない。臥蚕の眉、引結ばれた大きな唇。団十郎張りの張りのある眼に柔和な光を湛え、袴の膝に握り拳を置いてゆったりと床柱に凭れている。山の手の隠居とも見える春風和順の人体だが、何となく底力のある隙のない構えである。道灌山は穏やかに唇を綻ばしてから、
「林さん、それはいけない。私がこの席にいなけりゃいいが、こうして此処にいる以上、そんなことをされては私の顔が立たない。道灌山は自分の手に負えないので、警察の裾にとりついたといわれても困る。今きいていると、只それだけじゃ野毛山がやったかどうか、どうも覚束ない話だし、だいいち野毛山のやりそうもないこった。