Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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まと

魔都

久生 十蘭

Lesen Sie 魔都 (まと) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 293.999 Zeichen · 578 Bildschirme

Aozora Bunko

「加十さん、あなたぐらい薄情な方はなくってよ、東京にいながら一度も尋ねて来て下さらないんですもの、お怨みするわ。あなたひどい方よ」

と媚かしい眼元にありったけの思いを籠めて怨じるようにいう。

同郷人の出世は古市にとっても慶賀に堪えぬところだから、今から二年ほど前に一度「巴里」へ敬意を表しに出かけて行ったことがあったが、水一杯振舞われずにすげなく追い返された覚えがある。下宿へ帰って気がついてみると、肩に白いザラザラしたものがついているから、指先でつまんでチョイと舐めてみるとこれが塩っぱかった。このような訳柄だったから、村雲笑子が今夜に限ってどうしてこんなに馴々しくするのか、古市加十にすればまるで狐につままれたような心持。飽気にとられて只々笑子の顔を瞶めるばかり。笑子は焦れったそうに加十の腕を揺すぶり、

「何とかいってよう。暫くでしたくらいのことはおいいなさいな。ええ/\、どうせ妾は倫落の女よ、とてもお歯には合いますまいが、でも昔は教員室のあのぼろストーヴで一緒に尻焙りした仲でしょう、そんなに素気なくなさらなくともいいと思うわ。そんな顔をして見せたって今夜はもう決して離しゃアしないから。