Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
バラバラ、バラバラと、揺するたびに落ちてくる枯葉を浴びて、崖伝いに下りてゆくと、そこは、太田媛神社の境内であった。枯柳や梅にとり囲まれ、神田川の水にのぞんで、火事をよそに森深と更けている。
「おや※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
崖から境内へ、ポンと飛び下りた孫兵衛は、何か、柔らかなものが足へ絡んだので、それを手に拾って、常夜燈のそばへ寄って行ったが、一目見るとともに、
「やッ、こいつア? ……」
よみがえったような、また意外に衝たれたような唸き――。
「なんだ?」
周馬が横から顔を出すと、お十夜は、手にしていたのをクルクルと丸めて、
「畜生ッ。――やっぱり逃げたに違いねえ!」
腹立たしげに投げ捨てた。
見るとそれは、ところどころ火に焦がされた女の被布、浮織唐草の江戸紫は、まぎれもなく、お綱の着ていたものである。
火焔の中から、無我夢中で躍りだした万吉は、喪心しているお千絵様を肩にかけ、またお綱を励ましながら、やッとのことで、太田媛神社の境内へ逃げ下りてきた。
ここは、お茶の水の崖を屏風にしているので、火が森を焼き抜いてこぬ限りは、まず安全な場所であった。