Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
ホッ……と一息。
万吉は、拝殿の前へ、お千絵の体を辷り下ろした。紅蓮に巻かれた苦しさと愕きの果てに、かの女は意識を失っている。
白絖のかいどりにくるまれたまま、グッタリそこへ仆れる……。お綱は驚いて肌をさわってみた。
肌は温かであった。美しい曲下の黒髪も、幸いにして焼かれなかった。
「おう、お綱――」と万吉は、すぐに気転を働かせて、
「すまねえが、御手洗の水を掬ってきて、お千絵様を介抱して上げてくれ。おれはその間に渡し船を探してくる。とても、この火事騒ぎじゃ、橋を越しちゃ行かれねえから」
「あい、よござんす――」
気を失っているものの、ここに凍えさせておいてはと――お綱は、お千絵の体へ、自分の被布を脱いで着せかけようとした。
で――初めて、気がついたのである。
「おや、どこで脱げてしまったのだろう? ……」と。
何を思い出すゆとりもなかった。お綱の頭は今のところ、何もかもが昏迷している。万吉とても同じであろう、川縁へ駈けだして行くと、無論、誰か持主のある物だろうが、委細かまわずもやいを解いて、手頃な小舟を社の裏へ曳いて来る。
その間に。
白い素足を闇に見せて、お綱は向うへ走って行った。