Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme

Aozora Bunko

「阿波の海陸二十七関、そこを潜って剣山の間者牢までまぎれこむのは、なるほど、できるだけ密かがいいし、弦之丞様の身になっても、足手まといがねえほうがいい。けれど俺は大不足さ、ここまできて、大事な、本舞台へのり出さなくっちゃ、目明し万吉の一分が立たねえ。イヤ、そういうと、たいそう見得をきるようだが、大した出世にも金にもならず、ただこういう山を当てることだけを楽しみに、家や女房まで捨てて歩いている、目明し根性にしてみりゃア、ちっとばかり、役不足にも思うだろうじゃねえか」

「おれも天満の万吉だ。ポカンとした面をして、江戸に待っていられるものか。弦之丞様に追いついて、どうでも一緒に阿波へ渡る――と、じつあ、常木様のお諭しもきかねえで、ぷいと、代々木を飛びだした帰り途――、これ見てくンな、柳原の吊しん棒で、合羽や脚絆の急仕立て、すぐに旅へ立とうとしたが、ハッと気がついたなアお前のことだ……」

しんみりと声を落すと、今まで、怨みがましく、邪推した心も解けてお綱は、ほつれ毛の濡れついた顔をジッとうつむかせた。

「その気持だけを買ってくれ。くどいようだがあかの他人で、俺ほどお前の今の気持を、よッく呑み込んでいる者はあるめえと思う。