Japanische Klassiker mit Furigana
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とびとかきととり
鳶と柿と鶏
豊島 与志雄
Lesen Sie 鳶と柿と鶏 (とびとかきととり) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.493 Zeichen · 21 Bildschirme
三
絶対に翻訳のむずかしい作品もあり、また比較的容易い作品もあるが、然し要するに完全な翻訳というものは不可能に近いという悲観論に、吉村はいい加減相槌をうっていた。考えてみると、吉村自身、ちょっと外国文学を日本語に和訳したことがあるのだった。それはよいとして、彼女はまた李の方に尋ねかけたのである。
「あの男が叫んでた言葉は、ほんとにどういう意味でしょうね。」
もう吉村も李も返事をしなかった。そのまま消えた言葉は、なにか残忍な執拗なものを跡に残した。
宿に帰っても、吉村はそのことが変に気にかかった。
三
その翌日、夜になって、李が一人で吉村を訪ねて来た。
「明日、東京に帰ります。」と李は云った。
その顔を、吉村はじっと見ながら、彼に対して自然と心が開けるのが嬉しく、すぐに云い出した。
「昨日の、あのことだろう。そう気にしなくてもいいじゃないか。」
「気にはしていません。」
そして李はちょっと微笑した。
「損をしたという気がします。」
「へえー、損をしたって、分らんね。」
「よく考えてみると、半月ばかり損をしました。なんだか、上山さんが好きだったから……恋愛じゃありませんよ、ただ好きだったから、うかうか遊んでるうちに、勉強の方を、半月ばかり損をしていました。