Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

といって、「静かになさい」と叱られました。あまり大き過ぎるためか、時は正確ではなかったそうです。月に一回、裏から梯子をかけて、登って行って捲くのだとか聞きました。

上条の下宿人は、大抵学生さんですから、昼間は皆留守で静かです。祖母は一心に裁縫していられます。次から次と千住から持って来られるので、仕事の絶えたことがありません。裁縫が切りになりますと、買物に連れて行って下さいます。私は大喜びで、お河童の頭を振り振り附いて行きます。賄の菜の外に、何か兄の口に合う物をというのですが、つい海苔、佃煮、玉子などということになるのでした。

下宿を出て右へ行くと、間もなく大学の境を離れて無縁坂です。坂の下り口の左側に小店や小家が並んでいる中に、綺麗な家の一軒あるのは妾宅だということでした。化粧した美しい女が、いつも窓から外を眺めているという、学生たちの噂でした。或学生さんが買物をするとて、お札を剥出しに掴んで、そこの窓の方を見ぬようにして通り過ぎたのですが、気が附いたらその札がありません。人通りの少いところだから、その辺にきっとあるとは思うけれど、またその窓の前を探しながら通りたくないので、ぐずぐずしている間に時が立ってしまった。