Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

幾度か事細かな書面を下さるのでした。その娘を連れて伺った時、お座敷に坐っていますと、お庭の中を流れる水の音が、さらさらと優しく聞えました。水道町ですから、水は御自由だったのでしょう。由緒のあるお家らしく、風雅な構えで、障子の腰張に歌が散らし書にしてありました。その折奥様にもお目にかかりました。賀古氏は常磐会に歌をお出しになるのでしたから、歌人にもお知合が多かったのでしょう。井上通泰氏などは特に御別懇のようでした。ずっと前に、私どもが滝野川へ散歩した時、まだ詰襟服の井上氏を連れて、掛茶屋に休んでいられるのにお会いしたことなどもありますから、古いお知合だったのでしょう。

賀古氏の父上は、割合に早くお亡くなりになったので、老年の母上によくお尽しになるのでした。病院にお住いの頃でしょう。夜を更してお帰りになると、母上は睡らずに待っていられます。廊下でわざと足音を高くして、「おっかあ、帰ったよ」と、一声お懸けになると、それで安心してお休みになるのだとのことでした。ほんとは何とおっしゃるのか知りませんが、そうお話になるのを聞いて、「御尤で」と、幾度も母はうなずきました。