Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

といって、帰って行きました。

それからはつは度々尋ねて来るようになりました。けれども折角新しい生涯に入ったのに、運が悪いらしく、一、二度引越もしましたが、その度に粗末な家になって行きます。初音町辺の裏にいた時に尋ねて行きましたら、ずいぶんひどい家にいました。それでもはつが住めば綺麗になるので、よく片附いた部屋で、茶を入れて出してくれました。

その頃でしたか、古い袴を持って来たことがありました。「洗張でもするの」と聞きましたら、「これは主人のために探して来ました」といいます。或神社のお札配りの仕事を見附けましたが、お社の仕事だから袴をはくのがよかろうと思ったのです。「脚はかなり丈夫ですから」とのことでした。しかしこの仕事も続きませんかった。何しろ目が悪いのですから、標札を読むのに時間がかかるので、一月ほどで止めてしまいました。

或年の正月に、はつは年始に来ました。私は母と昼の食事をしていたところで、「私は済して来ましたから」と、離れの母の部屋で待つことにして、そちらへ行ったかと思いますと、「奥様、御隠居様」と、大声で呼立てます。

何事かと思って、廊下を急いで行って見ましたら、母の部屋の障子の隙間から、煙が盛に吹出しています。