Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

「あっ」とびっくりしましたが、はつはすぐに障子を開け拡げて、縁先にあった瀬戸の大きな手水鉢を取るなり火燵へ投げつけました。その一杯の水で下火になったところへ、私たちも手に手に手桶を持って来て、水をかけて火を消しました。母は灰を厚くかけて食事に立ったのですが、炭火がはねて蒲団に燃えついたのです。もう少し知らずにいましたら大事になったでしょう。それでも天井は幾分か焦げました。ちょうどはつが来合せて、咄嗟の機転で事なく済みましたが、それから母は、飛んだ失敗を悔むにつけても、はつの行動を喜んで、その話の出る度に、「忠義のはつが」といわれます。それを子供たちが笑いました。

その内に、父が亡くなったから暫く田舎へ行きます、という便がはつからあったので、それもよかろう、あの目の悪い人と東京で暮すのでは骨が折れようからと思いました。

それからはつのことも、忘れるともなく忘れて時が立ちましたところ、久しぶりに尋ねて来たのを見ますと、小ざっぱりした様子はしていますが、元気がありません。

「お暇乞にまいりました」といいます。

「どこへ行くの」と聞きましても、すぐには答えずに黙っています。