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Japanische Klassiker mit Furigana

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さとう

麻布襍記 ――附・自選荷風百句

永井 荷風

Lesen Sie 麻布襍記 ――附・自選荷風百句 (さとう) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.256 Zeichen · 77 Bildschirme

Aozora Bunko

父は其の時今夜は大学の書生を大勢引連れ二重橋へ練り出して万歳を三呼した話をされた。万歳と云うのは英語の何とやらいう語を取ったもので、学者や書生が行列して何かするのは西洋にはよくある事だと遠い国の話をされた。然しわたしには何となく可笑しいような気がしてよく其の意味がわからなかった。

尤も其の日の朝わたしは高台の崖の上に立っている小石川の家の縁側から、いろいろな旗や幟が塀外の往来を通って行くのを見た。そして旗や幟にかいてある文字によって、わたしは其頃見馴れた富士講や大山参なぞと其日の行列とは全く性質の異ったものである事だけは、どうやら分っていたらしい。

大津の町で露西亜の皇太子が巡査に斬られた。この騒には一国を挙げて朝野共に震駭したのは事実らしい。子供ながらわたしは何とも知らぬ恐怖を感じた事を記憶している。その頃加藤清正がまだ朝鮮に生きているとか、西郷隆盛が北海道にかくれていて日本を助けに来るとかいう噂があった。しかも斯くの如き流言蜚語が何とも知れず空恐しく矢張わたし達子供の心を動かした。今から回想すると其の頃の東京は、黒船の噂をした江戸時代と同じように、ひっそりして薄暗く、路行く人の雪駄の音静に犬の声さびしく、西風の樹を動かす音ばかりしていたような気がする。