Japanische Klassiker mit Furigana
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さとう
麻布襍記 ――附・自選荷風百句
永井 荷風
Lesen Sie 麻布襍記 ――附・自選荷風百句 (さとう) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.256 Zeichen · 77 Bildschirme
祭と騒動とは世間のがや/\する事に於いて似通っている。
十六の年の夏大川端の水練場に通っていた。或日の夕方河の中からわたしは号外売が河岸通をば大声に呼びながら馳けて行くのを見た。これが日清戦争の開始であった。翌年小田原の大西病院というに転地療養していた時馬関条約が成立った。然し首都を離れた病院の内部にはかの遼東還附に対する悲憤の声も更に反響を伝えなかった。わたしは唯薬局の書生が或朝大きな声で新聞の社説を朗読しているのを聞いたばかりである。わたしは其の頃から博文館が出版し出した帝国文庫をば第一巻の太閤記から引続いて熱心に読み耽っていた。夏は梅の実熟し冬は蜜柑の色づく彼の小田原の古駅はわたしには一生の中最も平和幸福なる記憶を残すばかりである。
明治三十一年に奠都三十年祭が上野に開かれた。桜のさいていた事を覚えているので四月初めにちがいない。式場外の広小路で人が大勢踏み殺されたという噂があった。
明治三十七年日露の開戦を知ったのは米国タコマに居た時である。わたしは号外を手にした時無論非常に感激した。然しそれは甚幸福なる感激であった。私は元寇の時のように外敵が故郷の野を荒し同胞を屠りに来るものとは思わなかった。