Japanische Klassiker mit Furigana
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たそがれ
黄昏
宮本 百合子
Lesen Sie 黄昏 (たそがれ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.500 Zeichen · 29 Bildschirme
黄昏
宮本百合子
一
水口の硝子戸が、がらりと開いた。
ぼんやりとして台の前に立ち、燈(あかり)を浴びて煮物をかきまわしていたおくめは、驚いて振向いた。細めに隙(あ)いたところから、白い女の顔らしいものが見える。彼女がその方を見たと判ると、外の顔は前髪を一寸傾け、
「今晩は」
と云いながら、残りの戸を全部明けて姿を現した。
「まあ、何だろう、のぶちゃんかえ」
緊張し、訝しげな色を湛えていたおくめの両眼には、忽ち何とも云えない暖い光が漂った。
「どうしたの? 今頃、学校から来たの?」
おくめは、菜箸(さいばし)を片手に持ったまま、戸口へ下りて行って、懐しそうに娘の風を見た。
「暗がりで誰かと思ったよ」
のぶ子は、華やかな桃色の半襟と、大柄な絣の上下ついの衣服に包まれて、夜目には、我娘ながら見紛うばかり美しく見えた。
「何か用かえ。――まあ一寸お入りな」
おくめは、娘を眺め、夕飯の仕度にかかった台所を見廻し、両方に気兼ねをするような表情を現した。
「直きすむから、上っておいで」
然し、のぶ子は、外に立ったまま、
「ええ」
と云うばかりで入ろうとはしない。