Japanische Klassiker mit Furigana
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たそがれ
黄昏
宮本 百合子
Lesen Sie 黄昏 (たそがれ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.500 Zeichen · 29 Bildschirme
「惜しいね、せっかく来て会わないのは。寝顔だけでも見せておくれな」
おくめは、ふさ子を促すようにして立ちかけた。
「じゃあ……のぶちゃん、お前連れてっておあげ」
のぶ子に案内されて、客間の外の縁側を廻り、奥の六畳に、すやすや寝息を立てている孫の顔を覗き込んでも、おくめは、どうも心が満たなかった。
これがただ二人ほかない娘の、やっと人になった一人の家へ来て味う心持だろうか。
自分は、他人の沢田の家などで、受けようにも受けられない暖かさを、ここで、思う存分楽しみたいと、我知らず待ち望んで来たのではなかったろうか。
おくめは、思わず、孫の寝顔を見守ったまま、
「姉さんも相変らずだねえ」
と呟(つぶや)いた。
「……気がせわしいもんだから……」
のぶ子は、自分が連れて来て、あまり歓待もされない母親に気の毒そうに独言した。
近所から鮨などを取りよせて馳走になっても、おくめは、まだ何かさっぱりしない心持で、おちおち味ってもいられなかった。途中で手間を取ったので、時間は、思いのほか晩(おそ)くなっている。
銚子が後から後からと数を重ねるばかりで、奥の客も、何時帰るか、見当がつかない。