Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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たそがれ

黄昏

宮本 百合子

Lesen Sie 黄昏 (たそがれ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.500 Zeichen · 29 Bildschirme

Aozora Bunko

おくめは、もう主婦の前などを取繕っている余裕はないらしかった。皿小鉢などを、茶の間に運ぶ米子の傍をすり抜けて、自分の部屋に入ると、後から後からとのぶ子に相談をしかけては、水櫛で鬢(びん)をかきつけ行李の底から外出(よそ)着の羽織や襟巻を出し、手伝うにも勝手が判らないで立っている娘の廻りを、おくめは、四畳半一杯に動き廻った。

そして、息を弾ませるようにして、せかせかと、古風な下着の襟がちぐはぐに出過た胸元に、黒繻子の帯をしめた。

「おや。ハンケチを見なかったかい。困っちゃうな、滅多に改った風なんかしないもんだから……お前はもうそれでいいの?」

彼女の気の立った早口は、若いのぶ子に妙な極り悪さを感じさせたほど、きんきん静かな家中に響き渡った。夕飯だけはしまって行ったらよかろうという米子の言葉を振り切るように、おくめは周章ふためいてやっと往来に出たのである。

二

下谷から、麹町まで行く長い電車の間、おくめは、ぽっとして気が弛(ゆる)んだように、はかばかしく口も利かなかった。若々しいのぶ子の傍にすりつくように腰をかけ、濃鼠色の襟巻から、上気(のぼ)せた顔をのぞかせ、彼女は、どこを通っているのか考えても見ない風であった。