Japanische Klassiker mit Furigana
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おうそんせんせいげんこうろく
黄村先生言行録
Lesen Sie 黄村先生言行録 (おうそんせんせいげんこうろく) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.786 Zeichen · 27 Bildschirme
「君、どうぞ、君、どうぞ。」先生は立って行って、その男の肩に手を掛け、むりやり火燵にはいらせ、「まあ一つ飲み給え。遠慮は要りません。さあ。」
「はあ。」男は苦笑して、「こんな恰好で、ごめん下さい。」見ると、木戸にいる時と同様、紺の股引にジャケツという風采であった。
「なには? あの、店のほうは?」私は気がかりになったので尋ねた。
「ちょっといま、休ませて来ました。」ドンジャンの鐘太鼓も聞えず、物売りの声と参詣人の下駄の足音だけが風の音にまじって幽かに聞える。
「君は大将でしょうね。見せ物の大将に違いないでしょうね。」先生は、何事も意に介さぬという鷹揚な態度で、その大将にお酌をなされた。
「は、いや、」大将は、左手で盃を口に運びながら、右手の小指で頭を掻いた。「委せられております。」
「うむ。」先生は深くうなずいた。
それから先生と大将との間に頗る珍妙な商談がはじまった。私は、ただ、はらはらして聞いていた。
「ゆずってくれるでしょうね。」
「は?」
「あれは山椒魚でしょう?」
「おそれいります。」
「実は、私は、あの山椒魚を長い間さがしていました。伯耆国淀江村。うむ。」