Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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うえすぎけんしん

上杉謙信

吉川 英治

Lee 上杉謙信 (うえすぎけんしん) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 129.102 caracteres · 256 pantallas

Aozora Bunko

機微寸前

ぐわうんと、音波は広い野を縫い、霧を揺すり、ここの木立までを貫いてくる。

「離せっ。ここをどこと思う」

伝右衛門は脚をあげた。

鶴菜の背へ桶の水がかかった。わがむすめよりは、その水のほうが、遥かに大切であるかのごとく初鹿野伝右衛門は見向きもせず、杉の木の間を駈け去った。

機微寸前

鰹木の立っている檜皮葺の一宇が見える。八幡神社の古い拝殿だった。それと背中合せに南面して、かなり広い地域にわたって諸所に陣幕が張り繞らされている。

信玄のいる本営は、ここら辺から方一町に及ぶ全部がそれといっていい。どこの、どの幕囲のなかに、信玄その人が床几をすえているのか、旗じるしや馬簾だけを的に捜したのでは分らないほど、同じような幕営がいくつもあった。

「よい水を求めて参りました」

初鹿野伝右衛門は、その一つへ身を潜らせた。そこには明らかに信玄の姿があった。

床几を空にして、信玄は立っていた。彼の満身には戦気が立っている。夜来の烈しい血しおのうごきが、自然、口腔を渇かせて来るのであろう。彼はさっきから頻りに一杯の水を欲しがっていたのである。足軽でも奔らせるべきではあるが、主君の飲料水となると小者では心許ない。