Clásicos japoneses con furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lee 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 9487 caracteres · 19 pantallas
手っ取り早く言えば、お竹はあまりにも素直過ぎ、優し過ぎ、そして美し過ぎたために、もろもろの悪魔外道が、いろいろと誘惑の手を伸べて、お竹を無間地獄へ引摺り込もうとしているのでした。
二十一歳のお竹が急に美しくなったわけではありません。十四の時佐久間家に引取られた時から眼鼻立ちの端正な、笑顔の可愛らしい娘でしたが、お勝手の埃と脂に塗れて、ろくに磨き立てる隙も無いままに年を取り、誰も顧みる人も無いうちに二十一の年を迎えたのです。ところが、この春猿若勘三郎の芝居見物に店中の者が揃って出かけた時、お竹はお内儀のお供で、初めて白粉というものを塗り、借物ながら柔い物を身に着けてきました。
「お前はまア、お竹さんかえ」
「生れ変ったんじゃないか」
「鏡を見て御覧よ、自分の顔がそれぐらい変ると大概眼を廻すから」
店中の者にワイワイ言われてお竹はフと鏡を覗きました。
「あッ、――これが、あの私かしら」
思わず自分の頬をつねって見たのも無理はありません。煤と脂を洗い落し、白いものを塗って紅を差したお竹の顔は、後に浅草の観音様の天井に描いた、狩野洞春美信の天女よりも美しく、そして神々しかったのです。