Clásicos japoneses con furigana
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あらしのなか
暴風雨の中
山本 周五郎
Lee 暴風雨の中 (あらしのなか) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 15.339 caracteres · 30 pantallas
三之助は予想もしなかった、娘がそんなことをするとは思いもかけなかった。
「いけねえ、おしげさん」
吃驚して叫んだが、櫂はもう打ちおろされていた。三之助のあっという声で、ふり向こうとした男の頭の上へ、……鈍いいやな音と共に、男はうっといって横へのめった。娘はさらに撲った、二度、三度、後頭部と背中を。力いっぱいの撲り方であった。男は俯伏せに倒れて動かなくなった。
「なんてことをするんだおしげさん」
「刃物はなくって」娘は喘いだ、「あんた短刀を持ってたんでしょ」
娘は部屋の中を見まわした。のぼせあがって、狂ってでもいるような眼だった。かたちのいいうりざね顔の、濃い眉が逆立ってみえた。小麦色のなめらかな肌で、縹緻もかなり際立っている、強い気性らしいが縹緻はよかった。娘は短刀をみつけた、三之助のものだろう、それは部屋の隅に放ってあった。娘はそれを抜いて三之助のところへ戻った。
「堪忍して、三ちゃん、堪忍して」娘は三之助の繩を切りながら云った、「あんたが此処にいるって、この男に教えたのはあたしなの、あたしがこの男に教えたのよ」
娘の眼から涙がこぼれ落ちた。廊下へかぶる波はまえよりひどくなり、飛沫が二人のところまで飛んで来た。