Clásicos japoneses con furigana
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くわのきものがたり
桑の木物語
山本 周五郎
Lee 桑の木物語 (くわのきものがたり) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 39.815 caracteres · 79 pantallas
こう云って正篤は立ち、裏庭のほうへまわっていった。ついてゆくと、見覚えのある桑の木の前で立停り、こちらへ振返った。
「数えてみろ悠二郎、二人の桑だ」
すぐにはその意味がわからなかった。しかし木の数を読んでゆくうちに、古い記憶がはっと思いうかび、危うく声をあげそうになった。――そうして一つ一つ、桑の木に手を触れながら、三十八本まで数え終ると、もはやがまんが切れ、そこへ棒立ちになって面を掩った。
「おれのと、おまえのと、毎年二本ずつ、あれからずっと、欠かさず植えてきた」
「――――」
「夏になって、実が生ると、おれは独りで此処へ来て、おまえに呼びかけながら、この実を摘んで喰べた――この実で酒を醸して、おまえに呼びかけながら、更けた寝所で独りそっと飲む癖もついた、おまえはいつもおれの側にいたのだ、わかるか、悠二郎」
悠二郎の喉から嗚咽が堰を切った。すると正篤が近寄り、彼の手を取って、そうして自分も噎びあげた。
――会いたかったぞ、悠二郎。
――殿、お会いしとうございました。
握られた手から手へ、互いのおもいは痛いほど鮮やかに通じ合った。やがて正篤は「もういい、もうこれでいい」