Clásicos japoneses con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lee 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 169.810 caracteres · 345 pantallas
「あたしだけでも、いづらいんだから」
「そうだろうね」
その返事は予期していた。ただ訊ねてみただけであった。
「では枕崎の宿屋に戻ろうかな。まだバスはあるだろう」
「坊にも宿屋があってよ。宿屋と言えるかしら。そこの小父さん、あたし小さい時から、よく知ってるから。案内しましょうか」
女は立ち上った。地も空も蒼然と昏れ、時々坊岬灯台の光の束が、空を薙いで走る。石段も暗く、手をつなぎ合って、そろそろと降りた。しめった掌を離すと、女は道を降り、ダチュラの花を四つ五つ摘んで来た。
「寝る部屋に置いとくといいわよ」
花を五郎に手渡した。
「部屋が匂いでいっぱいになるわ」
その口調に残酷さがあった。福の通夜のことを実感として思い出せというのか。しかし五郎は素直に返事した。
「ありがとう。きっと君の夢を見るよ」
そのまま町の方に歩いた。すでに戸を立てた家も多い。すべて屋根が低いので、町は暗がりの底に、へばりついているようだ。ラジオの音や話声が、家の中から聞えて来る。
「この町の人は、ずいぶん早寝だね」
「不景気だからよ」
女は言った。なぜ不景気なのかは説明しなかった。
女が案内した家は、宿屋らしくなかった。