Clásicos japoneses con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lee 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 169.810 caracteres · 345 pantallas
這い出るのに苦労をするらしく、しきりにもがいている。やっと出て来ると、そいつはへんな動き方をしながら、宙に浮く。彼は視線を外らそうと思いながら、やはりその時眼が離せなかった。
〈病院からおれが脱出したのも、これと同じではないか。むりをして、もがいて、苦しんで――〉
しかも醜怪なものに変形するという犠牲まではらって、おれは何を得たのか。現実に角を突き合わして、手痛い反撃を受けただけの話だ。
歩いている町のところどころに、はっと記憶をつついて来るような眺めがあらわれる。神社の鳥居とか、質屋の白壁の土蔵とか。そこだけが昔の形のままで残っている。それを取巻く風景には馴染がない。彼は首を傾ける。道筋もすこし変化したらしい。たとえば昔は曲っていた道が、今はまっすぐになっている。さびれていた道がにぎやかになり、魚屋や八百屋が店を開いている。
「たしかここらの――」
五郎は用心深く視線を動かした。
「この建物じゃないか?」
大きな赤提灯をぶら下げた売春宿である。もちろん眼の前にあるそのしもた屋風の二階建てには、提灯はぶら下っていない。でも歩いて来た感覚からして、ここらに建っている筈であった。