Clásicos japoneses con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lee 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 169.810 caracteres · 345 pantallas
風がおだやかに地面をはらって行人の着物の裾を吹いた。
あたりが暗くなった時、私は惨めな気持になりながら嶮しい石畳の坂を本郷台に登っていた。今晩は、またどうやって時間をつぶしたらいいのだろう。私は外套のポケットを探った。ばら銭が指に冷たかった。酒を飲もう。何もかも、一時でも忘れさせて呉れるなら、酒でも阿片でもハッシュシュでも、私は即座にのみこむ。私は昨夜の、頭のしびれるような酔い心地を物うく思い出していた。頽廃におもむく瞬間の快よい戦慄を、私は貪るように欲望した。
本郷通りの並木の影に街灯が灯った。相変らず白痴のような表情した帝大の学生や、小癪な面構えをした洋装の小娘が、私に逆らうようにして通り過ぎる。本郷三丁目の近くに薄汚ないおでん屋があって、私はのれんを肩でわけながら入って行った。電話を泥竜館にかけて天願氏を呼び出した。酒を飲みませんか。
私は腰を下して酒を注文した。狐のような顔をした女が、ちょうしをぶら下げてやって来た。生ぬるい液体が食道をこころよく流れ落ちる。私は頬杖をついた。鬚がじゃりじゃりと鳴った。
「無精鬚の円生」と私は思った。市井の女等を相手にして痴愚の恋に耽る気持は今更毛頭無かったけれど、そうしたことから段々縁遠い容貌に私がなって行きつつあるということは、何となく厭であった。