Clásicos japoneses con furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lee 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 169.810 caracteres · 345 pantallas
「え? グラマンだ。何故早く通報しないか」
「――見張は、死にました」
私はそのまま受話器をかけた。
男の略帽を拾い上げた。死体の側にしゃがみ、それで顔をおおってやった。立ち上った。息を凝らしながら、身体をうごかし、執拗に鳴きつづけていたつくつく法師をぱっととらえた。規則正しい韻律が、私の掌の中で乱れた鳴声に変った。物すごい速度で打ちふるう羽の感触が、汗ばんだ掌に熱いほど痛かった。生れたばかりの、ひよわな此の虫にも此のような力があるのか。残忍な嗜虐が、突然私をそそった。私は力をこめて掌の蝉を握りしめると、そのまま略服のポケットに突っ込んだ。蝉の体液が、掌に気味悪く拡がった。それに堪えながら、私は男の死体を見下していた。
丘の下からは、まだ誰も登って来なかった。軽い眩惑が、私の後頭部から、戦慄を伴って拡がって行った――
玉音の放送があるから、非番直に全部聞くようにという命令は、その日の朝に出ていた。此の部隊に関係ある電報は一通り目を通していたから、その方面の事態には通じていたとは言え、桜島に来て以来、新聞も読まずラジオも聞かないから、私は浮世の感覚から遠くはなれていた。